qa011
高硬度焼入れ鋼に鋼切削用のP種より
鋳鉄切削用のK種が適する事例
超硬合金のISO区分では、P種は鋼切削用途、K種は鋳鉄切削用途である。一方、金属材料は高硬度焼入れ鋼も鋼と表示されるので、熱処理の前後で適用区分の異なる工具材種を選択するという認識が生まれてこないようである。高硬度鋼にはP種ではなく、K種を適用すべきである。この事例は高硬度鋼の切削でP種からK種に切り替えて成功したケースである。
51HRCの焼入れ鋼を超硬合金P10で旋削加工すると工具寿命が短い。切れ刃のチッピングや欠損も生じる。ろう付バイトを使用する関係で、cBN焼結体は考えていない。
鋳鉄切削用のK10を選択するのが正しい。
超硬合金P10は鋼切削用ではないのか。
超硬合金のK種はWC-Coが基本組成であるのに対し、P種の組成はWC-TiC-TaC-Coからなる。TiCやTaCは、
*高温化学安定性に富む。
*切れ刃が高温となる鋼切削での拡散摩耗を抑制する。
しかし、
*切れ刃強度を劣化させる。
ため、高硬度鋼の切削ではデメリットに作用する。
高硬度鋼の切削では、WC-Co系の超硬合金K種を選択すると、WC-TiC-TaC-Co組成のP種よりも工具寿命と切れ刃の信頼性が向上する。高硬度焼入れ鋼の切削でcBN焼結体などの工具材種を選択できないときは、超硬合金K10を推奨する。