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工具寿命

 切削加工のエネルギのほとんど大部分は熱に変換されてしまうが、工具はそのエネルギを発生するために大きな力を被削物に与えると共に、発生した熱負荷にも耐えなけばならい。そのため刃先部分は苛酷な条件にさらされるので損傷の発生は避けることができない。損傷の形態は大別すると摩耗型と欠損型に分けられる(図1)。

1) 摩耗型 :
 工具表面が切屑や被削物との摩擦により擦り減る現象でその形態は工具の材質により一様ではないが、摩耗の発生する部位としてはすくい面と逃げ面に発生する。いずれも切削速度が高すぎたり、工具材種が柔らかいことが原因と考えられる。

・ すくい面は切屑との間で常に厳しい摩擦熱にさらされているために、摩耗痕としてすくい面上に窪みが生じる。これをすくい面摩耗またはその形状からクレータ摩耗とも呼んでいる。送り量が大きすぎると起こる。

・ 逃げ面は仕上げ面と直接接触しないように設けられたものであるが、刃先に近い部分では仕上げ面との接触は避けることができずここに摩擦が発生して摩耗が生ずる。これを逃げ面摩耗という。逃げ角が小さかったり、送り速度が低いときに起こる。

・ その他切屑との境界線上に発生する境界摩耗、あるいは切屑の擦過痕などがある。

2) 欠損型 :
 工具の一部が欠けて消失するもので工具の脆性破壊や塑性変型によって発生する。

・ チッピング 工具の切刃に生ずる小さい欠けをいう。チッピングだけでは工具の継続使用は可能である。工具材種が硬すぎたり、送り量が大きすぎるのが原因。

・ 欠損 工具切刃上の大きな欠けを言う。工具の継続仕様はできない。工具材種が硬すぎたり、送り量が大きすぎるのが原因。

図1 工具損傷の種類1)



1) 精密工学会、精密加工実用便覧、(2000)、p31、日刊工業新聞社

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