金属プレスHome プレスの基礎 > プレス概論 > 第9章 絞り加工の力学 : 降伏比
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絞り加工の力学 : 降伏比

降状点の荷重P y の引っ張り強さPに対する比率を言う。この値は引張り試験によって得られるが、その方法は規格(JIS Z 2241)によって定められている。試験はJIS Z 2201によって定められている短冊形の引張り試験片の両端に力を加えて引張り、荷重を増やしていったときの荷重の大きさと試験片の形状変化を測定する。その変化状態を図1に示す。

最初の状態は荷重の大きさに比例して歪みは増加するが、降伏点に達するとこの比例関係は成立しなくなる。ここまでの領域を弾性領域といい、荷重を除け歪みは0になり元の状態に復元する。しかし降伏点に到達した後は力を除いても元の状態に戻らなくなる。この領域を塑性領域という。降伏点を通りすぎるとわずかの力でも歪みが発生し伸びてくる。この部分を降伏伸びという。

ここで更に力を加えると力の増加にしたがって歪みが増加する領域にはいる。ここを一様伸び領域という。しかしある荷重を境にしてそれよりも小さい荷重でも伸びるようになり、ついには破断に至る。ここでの荷重の最大値を引張り強さと言いPで表すと、降伏比は次式で与えられる。

降伏比 = P y・P

 図1の特性曲線と降伏比の定義から、降伏比が低いということは、引張り強さに対する降伏点が低いことを示す。つまり一様伸び領域が得られる荷重の幅が大きいことを示すので、塑性加工には適していることがわかる。したがって降伏比が低いほどプレス型へのなじみが良く、良い成型形状が得られる。このことから降伏比の値はその材料の絞り加工の成形性に対する指標となる。

図1 降伏点と伸びの関係