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原子層成長法プロセス

 原子層成長法(Atomic Layer Epitaxy)は、III-V族やII-VI族化合物半導体の原料ガスを交互に反応室に供給し、自己停止機構を利用して原子層で成長させる方法です。III-V族半導体を例にとりますと、トリメチルガリウム[(CH3)3Ga]などの有機金属系III族原料ガスをV族原子で終端された基板表面に供給すると、表面にメチル基(CH3基)を残したままトリメチルガリウムは反応・吸着させます。このときの表面のメチル基の存在により、その後トリメチルガリウムを供給してもメチル基で成長が阻害されてそれ以上(原子層以上)の膜は成長しません。次に、水素でパージして余分な原料分子を取り除いた後、V族原料であるアルシンを供給し表面で反応吸着させます。この場合もアルシンは砒素原子表面が形成されたあとでは分解吸着反応が起こらず、理想的には、基板表面が原子1層分が覆われるまで成長が進み、表面全体が覆われると成長は自動的に終了して原子層1層の膜が得れます。この水素供給→III族供給→水素供給→V族供給を1サイクルといい、必要な原子層分だけサイクルを繰り返します。
 こうした1サイクルで1層の膜が形成される(1サイクル当たりの成膜速度が1層形成される)成膜は、成膜温度を変化させたり、III族原料やV族原料の供給量や供給時間を変化させても、原子層成長状態が保たれて、成長の自己停止機構と呼ばれています。逆に、成長の自己停止領域がないと原子層成長がなされているとは言えないことになります。
 もともとは、II-VI族系半導体でフィンランドのT. Suntoraが発見した成膜法です。その後、III-V族半導体にまで利用範囲が広がりましたが、成膜効率の悪さや自己停止機構に必要な原料からの不純物の混入があり、試作のみに留まっていました。近年は、MOSトランジスタのゲート高誘電体絶縁膜(high-K膜)としてHfO2やAl2O3を成膜する目的で試作検討がなされています。
 成膜法が提案されていた80年代から90年代前半までは、エピタキシャル成長であることを強調して、原子層成長法(ALE)や原子層エピタキシーと呼んでいましたが、最近では、必ずしもエピタキシャル成長に限らず原子層で堆積させて、ALD(Atomica Layer Deposition)や原子層堆積法と呼んでいます。