4.実験結果と考察
(1)工具損傷形態
図2はFCD45切削時の工具損傷状態を示す。セラミックス(Si3N4-9Al203系)では、200m/minにおいてはクレータ摩耗は見られないまま、逃げ面摩耗量において寿命に達した。刃先に溶着物の付着が若千見られた。300m/minと400m/minにおいては、共に刃先の溶着物は付着しなくなったが、クレータ摩耗が顕著に現れてくる。いずれも刃先のチッピングや境界摩耗はみられず、すり減り摩耗状態を示す。
コーティング(Al203系)では、200m/minで刃先に溶着物の付着が激しく、ノーズ部の摩耗が大きい。
300m/minになると溶着物は付着しなくなり、逃げ面摩耗量もいくぶん軽減される。400m/minでは逃げ面摩耗量は大きくなり、1minで寿命に達する。
クレータ摩耗はいずれの切削速度域においてもはっきり現れず、境界摩耗も認められなかった。
以上のことから耐拡散性、耐摩耗性に於て、セラミックス(Si3N4-9Al203系)よりはコーティング(Al203系)の方がいくぶん優れているとはいえ、何れも寿命に達するまでの切削時間は短く、FCD45材切削には適していないと考えられる。
(2)工具摩耗進行曲線
図3にFCD45切削時の前逃げ面及び横逃げ面の工具摩耗の進行状態を示す。切削は前逃げ面、横逃げ面の何れかが、0.2oを越えた時点で打ち切ったものである。
セラミックス(Si3N4-9Al203系)については200m/minから400m/minへと高速にになるほど摩耗量は大きくなり、300,400m/minでは切削時間1min経過後には前逃げ面摩耗、横逃げ面摩耗のいずれかもしくは両方ともに0.2oを越えて早くも寿命に達した。200m/minではいくぶん寿命が延びているが、それでも5min後には横・前逃げ面摩耗ともに0.2oを越えて寿命に達した。
コーティング(Al203系)については、全般的にセラミックス(Si3N4-9Al203系)よりも摩耗量は少なくなっている。200m/minで切削時間1Ominで横逃げ、前逃げ面摩耗ともに0.2oに達するがこれ以上にノーズ部の摩耗が大きかった。
200m/minよりも300m/minの方がかえって摩耗の進行はゆるやかになるが、400
m/minではわずか1minで寿命に達している。
(3)切削仕上げ面粗さ
図4にFCD45の切削仕上げ面粗さを示す。
セラミックス(Si3N4-9Al203系)においては切削速度による影響は表れていない。コーティング(Al203系)では切削速度200m/minが一番悪くなっている。溶着物の影響が考えられる。仕上げ面プロフィルでは全体的にコーティング(Al203系)よりはセラミックス(Si3N4-9Al203系)の方がチップの送りピッチがはっきりしており、山形の乱れも少ない。
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