4.実験結果と考察
(1)工具損傷状態
図1はSUS304切削時の工具損傷状態を示す。
焼結CBNは150m/minでは摩耗は少なく、200m/minでは横・前逃げ両全域で欠損を起こし切削に耐えられなかったが、それより高速の250m/minで2minまでチッピングもなく摩耗も小さい。安定性に欠けると考えられる。
超硬合金(WC-Co系)は150 m/min以下の切削速度では摩耗量は少なくチッピングも小さくクレータ摩耗の発生もないが、200
m/minでは1minでノーズ部に欠損を起こした。
超硬合金(WC-Co-TiC系)では150 m/minでややチッピングを起こしているが他のチップに比較して全速度域で摩耗量は少ない。
コーティング(Al203系)では逃げ面に剥離を起こしながら摩耗していく。
クレータ摩耗は現れない。コーティング(TiCN系)では100m/minの低速ですくい面に溶着物が付着し高速になると剥離が見られる。逃げ面摩耗も剥離から摩耗していく。
(2)工具摩耗進行曲線
図2にSUS304切削時の逃げ面の工具摩耗の進行状態を示す。
切削速度200m/minで良好な摩耗進行状態を呈したのは超硬合金(WC-Co-TiC系)のみであり、これは各切削速度で他に比較して良好であった。
超硬合金(WC-Co系)では150m/minまではたえられるが200m/minでは不適となる。
コーティング材2種(Al203系とTiCN系)では各切削速度ともに摩耗量多く、SUS304切削には耐えられない。
焼結CBNについては250
m/minの高速においてもある程度耐えられるが安定性に欠ける面がある。
(3)切削仕上げ面
図3にSUS304切削時の仕上げ面プロフィルを示す。
各切削速度において焼結CBNが良好な面を示す。100 m/minでは超硬合金2種(WC-Co系及びWC-Co-TiC系)が良好でコーティング材2種(Al203系及びTiCN系)はやや劣る。高速度域になると全体的にうねりが現れる。
(4)切りくず
図4にSUS304の切りくずを示す。
超硬合金2種(WC-Co系及びWC-Co-TiC系)が150
m/minまで斜らせん状切りくずを呈し比較的安定している。
コーティング(TiCN系)は各速度域とも巻き切れ状となり切削性能が劣る。
焼結CBNでは200
m/minのみ帯状切りくずとなり欠損の影響と考えられる。
|