ま と め
◎アルミニウム合金鋳物AC3A(鋳造)

1.実験の目的

試作セラミックス(TiCN-30TiB2系)のアルミニウム合金に対する切削性能の検討。

2.被削材

Al-12%Si系合金(別名シルミン3A)は用途により改善処理(溶製する時ナトリウム添加)され鋳造性、耐食性は良くなるが、比重、靭性、熱膨張係数が減少し被削性が低下する機関のピストン、ケーシング等に利用される。
  表1に使用したAl-12%Si系合金の化学成分と機械的性質を示す。

3.工具材

1に使用したセラミックス(TiCN系)及び比較用工具材超硬合金(WC-Co系)の成分と機械的性質を示す。
  前者は後者に比べて硬度(Hv)は著しく高いが抗折力は大幅に小さい。図1に切削前の工具すくい面の状態を示す。

4.実験結果と考察

(1)工具損傷状態

図2は両工具のAl-12%Si系合金切削時の工具損傷状態を示す。摩耗形態は両工具ともほぼ正常摩耗を呈している。

(2)工具摩耗進行曲線

3はAl-12%Si系合金切削時の前逃げ面および横逃げ面の工具摩耗の進行状態を示す。
  セラミックス(TiCN系)工具は、WC-Co系工具に比較し各切削速度とも逃げ面の初期摩耗幅が大きい。その後、加工経過毎、摩耗幅も進行しVB=O.2とした場合V=200m/minは22分で寿命にいたりV=300m/min,400m/minはおよそ4分で寿命となる。

 
(3)切削仕上げ面

4はAl-12%Si系合金の切削仕上げ面粗さの一例を示す。
  セラミックス(TiCN系)による仕上げ面粗さは超硬合金(WC-Co系)より大きく理論粗さ値の数倍に達した。

5.結論

(1)超硬合金(WC-Co系)のAl-12%Si系合金に対する適正切削速度は200m/min前後と考えられる。

(2)セラミックス(TiCN系)はかなりの切削が可能であるが、超硬合金に比べると工具寿命1/2程度と劣り、コーナー逃げ面の摩耗が顕著である。