4.実験結果と考察
(1)工具損傷状態
図3にGFRP切削時の工具損傷状態を示す。TiCN系セラミックス、超硬合金ともにすくい面摩耗はほとんど発生せず、逃げ面のみが摩耗している。
GFRPはガラスの長繊維を樹脂に含有させたものである。従ってこれを切削する場合硬いガラス部と軟らかい樹脂部を交互に切削する一種の断続切削と考えることができる。またGFRPは内部に多数の空孔があり断続切削を助長しているとも考えうる。ガラス繊維は硬くて脆いので切削により微粉化し、この微粉とガラス繊維が一種の砥粒として逃げ面と切刃工ツジに作用するため、工具摩耗をはやめエッジに丸みをつけるものと考えられる。セラミックスは超硬合金より低速側で切削しているが摩耗はかなり早く進行する。工具損傷はTiCN系セラミックスの86m/minの場合に横逃げ面境界部にチッピングが見られるのみで欠損等はない。
(2)工具摩耗進行曲線
図4にGFRP切削時の逃げ面の平均摩耗の経過を示す。VB=0.2oとするときTiCN系セラミックス、超硬合金ともに逃げ面摩耗のみで寿命にいたる。TiCN系セラミックスは切削速度が高いと非常に早く摩耗し、寿命は非常に短い。超硬合金は240m/minの高速では寿命は短いが120m/minでは寿命は比較的長い。しかしVB=0.15o程度になると急速に摩耗が進行する。
(3)切削仕上げ面
図5に工具寿命曲線を示す。VB=0.2oの場合TiCN系セラミックスはVT0.283=190、超硬合金はVT0.256=285である。
(4)切りくずと仕上げ面
切り屑は微粉となり、仕上げ面は非常に粗く気孔を含んでいる。仕上げ面に含まれる気孔はGFRPの特質であるが、仕上げ面の滑らかさは工具のすくい角の選択により向上すると考えられる。
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