ま と め
◎ねずみFC20(鋳造)

1.実験の目的

試作セラミックス(TiCN-30TiB2)と市販セラミックス(Al203系)の、ねずみ鋳鉄FC20に対する高速切削性能の検討。

2.被削材

ねずみ鋳鉄はCが、片状黒鉛の形状で存在している鋳鉄で、鋳造性、被削性が共に優れている。黒鉛が個体潤滑作用をもち、また油溜りとして役立つこと、熱伝導性がよいなどの理由で、鋳鉄は耐摩耗性が良好である。そのため一般機械部品に多く用いられる。表1に使用したねずみ鋳鉄FC20の化学成分と機械的性質を示す。

3.工具材

1に使用したセラミックス(TiCN-30TiB2)及び比較用セラミックス(Al203系)の成分と機械的性質を示す。硬度は同じであるが、坑折カは市販のもののほうが高い。図1に試作セラミックス切削前と切削後を図2に市販セラミックスの切削後を示す。

4.実験結果と考察

(1)工具損傷形態

1(TiCN-30TiB2)から200m/minでの切削はクレーター摩耗がさほど大きく進行していないのに対し300m/min、400m/minではクレーター摩耗が顕著である。又横逃げ、前逃げ面摩耗においては複雑な摩耗形態をしている。これはチャンファー幅にバラツキがあることに原因があると考えられる。図2(Al203系)からは試験1、試験2ともにクレ一ター、前横逃げ面摩耗すべて正常摩耗であることが観察される。

(2)工具摩耗進行曲線

図3に試作セラミックスの前横逃げ面の工具摩耗の進行状態をしめす。試作セラミックスではすべての切削速度で3回のテストがバラ付いている。又前逃げ面における200m/min、300m/minはほとんど同様の摩耗進行を示している。そ机に対し市販セラミックスは2回のテストで再現性のあるデータが得られかなり刃物として安定していることが分かる。両者の間では寿命に至るのに大きな差がある。市販の300m/minで試作セラミックスの200m/minに相当し、市販の200m/minでは試作チップの3倍近くの寿命があることが分かる。

(3)切削仕上げ面

5にFC20切削時の表面粗さの変化をしめす。両者とも10μm前後で理論粗さ値に近い。市販チップでの粗さは各切削速度でだいたい安定している。

5.結論

(1)試作セラミックス(TiCN-30TiB2系)によるFC20の切削ではVB=0.2に到達するのに200m/minでも10分程度であった。

(2)比較用セラミックス(Al203系)は安定した正常摩耗の進行を示し高速切削に適していると考えられる。