非溶極式のイナートガスアーク溶接である。電極にはタングステン又はタングステン合金を用いる。主としてシールドガスにアルゴンを用いて、アークおよび溶融金属を空気より遮断保護する。図1に原理、図2に装置構成を示す。
ティグ溶接の部
(区分記号:T)
T-1)原理と装置構成
T-2)実技入門
遮光フィルタの選択(重要)
アーク光は高輝度可視光であるため、裸眼で溶融池(加工点)を見ることはできない。溶接電流に対応する適切なしゃ光フイルターを用いることで、初めて溶融池を肉眼で観察できるようになる。最適な濃度のフィルターを選択することは、良い溶接を行うことと、目を保護する上で極めて重要となる。以下に、ミグ、マグ溶接に使用するしゃ光保護具用フイルター選択の目安を記す。
<ティグ溶接で溶融池の観察に適したフィルタープレート番号 (参考値)>
・溶接電流(100A 以下):番号 9、10
・溶接電流(100〜300A):番号11、12
・溶接電流(100〜300A):番号11、12
溶接作業の記録例(実技練習の場合)
溶接技量を上げるために、実習時には以下の項目を記録しておくと良い。
記録項目例 | |
---|---|
・溶接年月日 | |
・溶加棒の銘柄と棒径 | |
・シールドガス組成と流量 | |
・溶接姿勢と継手形状 | |
・溶接電流とパス数 | |
・外観検査の結果 | |
・その他 |
溶融池の観察のポイント(重要)
基本姿勢(下向)
安定した姿勢と運棒をスムーズにできる腕の位置を確保する。 | 図 ティグ溶接の基本姿勢 |
溶融池の観察
観察ポイント ・溶融池形状(幅、長さ、高さ) ・アーク中心と溶融面の位置関係 ・溶融金属の湯流状況 ・溶融状態とアーク音を記録 ・スパッタ発生状況 ※溶融池とは・・・ |
図 作業者から見た溶融池の形状例 (拡大) |
溶融池の目測と手操作の連携動作
実技の基本 | ティグ溶接の運棒 |
---|---|
アーク長 | 適正長を手で保持 |
溶接速度 | 溶接トーチの手送り調節 |
溶着量 | 溶加棒の手送り調整 |
ビード幅調整 | ウィービングとトーチ角度 |
アドバイス
所定の溶融池を保つよう、作業者は両手をコントロールする。利き腕の方はトーチを操作して、アーク長、溶接速度を調整する。もう片方の手は溶加棒の手送り速度で、溶融量を調整する。
T-3)アークの動画
ティグ溶接の動画を以下に示す。ただし、
溶加ワイヤは入れていないため、余盛りは形成しない。タングステン電極(非消耗)の先端から発生したアークにより、母材が溶融され、ビードが形成される状況を示している。溶融スラグおよびスパッタの発生もない。左図は側面から撮影した動画で、左方向にアークが移動している。右図は前方から撮影した動画で、手前方向にアークが移動している。
動画撮影;産総研四国センター
使用した電極;タングステン電極、溶加ワイヤなし、母材;ステンレス鋼(板厚9mm)、シールドガス:アルゴン、 自動溶接によるストリンガー運棒
Get the Flash Player to see this player. |
Get the Flash Player to see this player. |
動画撮影;産総研四国センター
使用した電極;タングステン電極、溶加ワイヤなし、母材;ステンレス鋼(板厚9mm)、シールドガス:アルゴン、 自動溶接によるストリンガー運棒
T-4)ビード外観と断面マクロ
母材 | 開先形状 | 溶接材 | 溶接電流 | 積層数 | シールドガス |
---|---|---|---|---|---|
SUS304 (12mmt) |
Y308 (2.4mmφ) |
140A |
10層23パス |
Ar トーチ 10-20 L/min |
表ビード外観 | 断面マクロ写真 |